動画では、訪問診療の現場で活躍するスタッフが、日々携帯するカバンの中身として
ハサミ、駆血帯、計算機、メモ帳、ペンライトといった基本的な看護用具に加え、
医療処置や救急搬送時のマニュアル、心電図などの検査に関するメモを自作している様子が映し出されており、現場での即応性と学習意欲の高さが印象的でした。筆者視点の洞察として、この
「アンチョコ(虎の巻)」の存在は、在宅という予測不能な環境下で、医師と連携を取りながら高度な判断を求められる訪問看護師の業務の特性を如実に示しています。病院のようにすぐに他の専門医や設備に頼れない状況だからこそ、個人が準備する知識と経験が非常に重要になるという、
病院勤務とは一線を画す業務スタイルが確認できます。
訪問看護師の年収と市場規模
訪問看護ステーションは全国で1万5,000カ所を超え(厚生労働省調べ)、今後も地域包括ケアの推進に伴い増加傾向にあります。これは、在宅医療の市場規模が拡大していることを意味します。
訪問看護師の平均年収は、都市部の常勤で
450万円〜600万円程度とされ、病院勤務の看護師と比較して同等かやや高めの水準にあります。ただし、夜間オンコール手当やインセンティブ制度の有無によって大きく変動します。特に、動画で紹介されている
神奈川県横浜市のような都市部では、クリニックや訪問看護ステーションの競争が激しいため、給与や待遇が優遇される傾向があります。
訪問診療・訪問看護のキャリアパス
訪問看護のキャリアパスは、病院勤務とは異なる専門性の積み上げ方が特徴です。入職後のロードマップは以下の通りです。
| キャリア段階 | 習得スキル・役割 |
|---|
| 1年目(基礎習得) | OJTで利用者宅の訪問に同行、記録作成、医療処置の基本習得、オンコール体制の見学。同行訪問で経験を積む。 |
| 3年目(専門技術・指導) | 独り立ちし、疾患別の専門知識(ターミナルケア、精神科訪問など)を深める。後輩の指導や実習生の受け入れを開始。認定看護師などの資格取得を検討。 |
| 5年目(チームリーダー・管理) | チームリーダーとしてシフト管理、多職種連携の中心的な役割を担う。利用者様のケアプラン作成に参画。特定行為研修の受講で業務範囲を拡大。 |
| 10年目(管理職・エキスパート) | 訪問看護ステーションの管理者、または特定の疾患に特化した専門看護師として独立。地域連携の中心人物として活躍。 |
求められるスキルと業界トレンド
訪問看護師に求められるのは、高い
臨床判断能力と
コミュニケーション能力です。利用者様の状態をその場で正確に把握し、医師や多職種(ケアマネジャー、薬剤師など)へ的確に報告するスキルが不可欠です。また、動画でも言及されているように、
救急対応や
ターミナルケアといった専門性の高い分野の知識も重要です。業界トレンドとしては、
ICT/IoTの活用による記録や情報共有の効率化、そして看取りや重症患者への対応を強化する
「在宅入院」(24時間365日対応の体制)の推進が挙げられます。これは、病院から在宅への医療シフトを象徴する動きであり、訪問看護師の専門性がさらに高まることを意味しています。